こんにちは。
T・たまもです。
今日ご紹介する本は、ノンフィクション。
聾唖者の女優の手記です。
エマニュエル・ラボリ「かもめの叫び」青山出版社
(現在は角川文庫から出ているそうです)
著者はフランスの舞台女優さんです。
当時、20代のすごく綺麗な人。来日公演を見に行きました。
この本を私が読んだのは1996年ですから、彼女ももう50歳前後のはず。
フランスでは、聾者に対する教育は主に口話(発話と読唇)で、手話教育は1991年に許可されたそうです。
手話の使用は1976年まで法律で禁止されていたとか。
この本で初めて知りました。
もっとも、日本ではどうなのかもよく知らなかったのですけれど。
聾者のコミュニケーションが手話だと思い込んでいた私には結構衝撃的な事実でした。
電車の中で、手だけを優雅に踊らせて、暗号のような会話をする聾学校の生徒たちを見て、うっとりしてたんですから。
発話や読唇が正式な料理なら、手話はいわばインスタント食品という位置づけだったと知ったのは最近のことです。
社会に出れば、健聴者と渡り合っていかなくてはならないのだから、手話に頼ってはいけない、という理屈は一理あるとも言えます。
そんなことを考えつつ、でもエマニュエルさんの気っぷと美貌にうっとりした私は、「そんな理屈は健聴者のおごりよ」という彼女の方が正しい、と思ったものでした。
ジェーン・ハーリー著「滅びゆく思考力」という本に、「先天的な聾者は健聴者に比べ、発達に偏りがある」とありました。
偏りというより、ある意味では違う種類の生き物なのだから、世界の認識が違うのは当然です。
歩み寄れるところまでお互いに歩み寄るべきでしょ、と思った記憶があります。