こんにちは。
T・たまもです。
今日ご紹介する本は、全集の1冊です。小説と詩が入っています。
この「日本の原爆文学」は原爆をテーマにした作品を集めて編纂された選集です。
この第1巻の原民喜を始め、大田洋子、林京子、井上光晴、堀田善衛、大江健三郎等、そうそうたる作家の作品および手記記録まで収録されています。
今はたぶん絶版だと思いますが、これだけの内容のものを編纂し、出版できたということに、日本の出版界の使命感みたいなものを感じます。
今調べたら、編著者は「核戦争の危機を訴える文学者の声明署名者」になっていました。
その体験を描いた小説「夏の花」また、詩の連作「原爆小景」が有名ですね。
高校の教科書に載っている戦争文学の定番で、私も何度か授業をしたことがあります。
詩人らしい繊細で美しい文章が特徴です。
細すぎる神経をぎりぎりまではりつめて、まるで薄いガラスがひび割れる寸前に震えながらきらめくような、そんな美しい滅びを予感させる作品群です。
原民喜は原爆をモチーフにした作品群を書いた後に鉄道自殺を遂げます。
そうしてみると、彼は幻想的な詩的センスと、するどすぎる感性ゆえに、幸か不幸か原爆という「死」を作品に昇華させ得たのかもしれません。