T's Cafe

小さな私の体験が、もしかしたら大きなヒントになる・・・かもしれません。前は学校の先生、今は自適のご隠居とおしゃべりしましょ。

ヤバいの手に入れたんですよ~、と言われたら・・・「枕草子」中納言参り給ひて その3

 こんにちは。

 T・たまもです。

 先週、「枕草子」から、「中納言参り給ひて」を取りあげました。っきょうもその続きです。

 先週、中納言藤原隆家(ふじわらのたかいえ)が、定子を訪問し、「すばらしい扇の骨を手に入れた」と自慢をする話だとご紹介しました。

 藤原家の人々について少々お話しました。

 

 隆家は、結構やんちゃで知られた人でもあります。

 この「中納言参り給ひて」でも、年齢的なもの(このとき隆家は十七歳くらい)もありましょうが、隆家の能天気な一面がうかがえます。

 隆家は、先に言った「素晴らしい扇の骨」について、「いみじ」としか表現しません。

 何度となく説明を求められても「いみじ」の一言なんですね。

 「いみじ」というのは、良きにつけ悪しきにつけ、とにかく程度が甚だしいこと。

 現代のことばなら「ヤバい」が一番雰囲気を伝えているだろうと思います。

「ヤバいの手に入れたんですよ~」

「いい紙貼って扇子に仕立てたら、姉上に献上しますからね~」

「どんな骨って、とにかくヤバいんですって」

「誰も見たことないくらいヤバい骨なんですよ」

 ヤバいのはあなたのボキャブラリーでしょ、と言いたくなりませんか。

 聞いている姉上(定子)や、周りのお姉さま方(女房たち)が、イラッとしてくるのが目に見えるようです。

 そこで清少納言が放った一言が「まるでクラゲの骨みたいですわね~」。

 

 ちなみに、ここでいう扇の骨というのは、現代の私たちが使うような扇子の、木の骨のことです。

 あ、木じゃなくてプラスチックやべっ甲などもたまにありますが。

 これに扇面の紙(または布)を貼って、扇子の形に仕立てるんですね。

 オーダーメイドです。

 こういう扇を蝙蝠扇(かわほりおうぎ)といいます。

 日本のオリジナルと聞きました。

 もう一種類、檜扇といって、木の板を綴って扇子にしたものもあります。

 おひな様の女びなが持っているヤツです。

 つづく。