こんにちは。
T・たまもです。
枕草子は、清少納言(せいしょうなごん)が書いた、日本三大随筆のひとつ。
今回は、ものづくしのジャンルから、「ありがたきもの」を取りあげましょう。
「有り難し」という、現代は「感謝」が第一義の古語。
古語としては、「めったにない」というのが第一義。
つかみからして楽しい。
そして、列挙されている「ありがたきもの」も、「あるある」なものばかり。
1000年前に書かれたとは思えない。
というより、1000年前も現代も、人は変わらないと言うことでしょうか。
短いので、本文もいっしょに見てみましょうか。
ありがたきもの。
舅(しゅうと)にほめらるる婿。
また、姑(しゅうとめ)に思はるる嫁の君。
妻の父親、夫の母親は、婿さん嫁さんにとって鬼門。
令和の世にして、嫁姑問題は相変わらずですからね。
でも、「上手くいっている」人たちもいないわけではない、絶妙の選択。
毛のよく抜くる銀(しろかね)の毛抜き。
毛抜きは、銀はやわらかいので鉄よりつかみが甘くなるのだそうです。
鉄は逆に錆が出やすいですよね。
現代ではステンレスという技術のおかげで錆びない、先端のあわせもきっちりしているものが多いので、ちょっとイメージが湧きにくい。
この、毛抜きだけは人間、または人間の行動ではないモノが選ばれています。
よほど清少納言にとって、「良く抜ける毛抜き」は大事な問題だったのでしょう。
と、私が言うと、
「先生、それは大事です」
と女子生徒は真面目な顔をします。
「眉毛を抜くのは痛いから、しっかりつかめるのはすっごく大事!」
なんだそうです。
おしゃれ男子もうなずいています。
そういえば、私も、刃先がちゃんと閉じなくて、切れ味の悪いハサミにイライラしてます。
ステンレスだろうと現代だろうと変わらないのかも。
ちなみに、本文の「抜くる」は、自動詞の「抜く」の連体形、カ行下二段活用です。
他動詞の「抜く」は、か行五段活用。
別の単語です。
つづく。