こんにちは。
今日は、先週に引き続き、「大鏡」から、道隆と福足君のお話です。
やっとこさ踊りをマスターして、兼家じいじのお祝い当日。
福足君は衣装をつけ、髪を結い、おとなしく舞台に上がります。
パパの道兼は、
「やっとやる気になった(あきらめてくれた?)か」
とほっとしたでしょうね。
もしかしたら、舞台上の福足君を見て、
「さすが我が息子、美少年じゃわい」
なんて、ひそかに悦に入ってたかもしれません。
が、そこはそれ、腕白で知られた福足君のこと。
この子の腕白ぶりは、つとに世間では有名だったらしく、
「きっと何かやらかすにちがいない」
と、誰もが期待(?)しています。
なにしろ、大鏡の作者に
「いとあさましう、まさなう、あしくぞ(誠にあきれるほどにたちが悪くてやんちゃで)」
と、盛大な形容をされているくらいですからね。
授業でそう言うと、生徒たちはニヤニヤしたものです。
「さあ、福足君はこの後どうするでしょう?」
と、聞くと、
「暴れた」
と、楽しそうに答える生徒たちなのでした。
舞台に上がり、楽士たちがチューニングを始めてから、つまり誰も手が届かないところに来てから、
「や~だよ、ぼく踊らない!」
と、福足君は叫んで、髪をくしゃくしゃにして、衣装を引きちぎり、仁王立ち。
さすが、やんちゃ坊主は効果的な時機と方法を心得ています。
道兼パパは茫然自失。
周囲の見物客たちは期待通りではあるものの、だからといって福足君をなだめるとか追い出すとかできるわけでもありません。
なにしろ主役の兼家じいじの孫ですからね。
気まずい沈黙が流れたことでしょう。
つづく。