こんにちは。
T・たまもです。
今日ご紹介する本は、戯曲です。
聖書の中にある、洗礼者ヨハネの死をめぐるエピソードを戯曲化した作品です。
ヘロデアの娘と、洗礼者ヨハネの物語は、古今東西の芸術家にインスピレーションを与えてきました。
絵画にはサロメ(ヘロデアの娘)がヨハネの首を持つ姿を描いた作品がたくさんあります。
オスカー・ワイルドといえば、童話「幸福な王子」で知られるイギリスの作家です。
童話も切ない話が良いのだけれど、なんといってもこの方の真骨頂はこの「サロメ」や「ドリアン・グレイの肖像」のような、魔性の美。
サロメは、特に、ヒロイン・サロメの純潔な乙女心と、誇り高い王女のプライドがあいまって、恋が残酷な魔性に変じていく様が圧巻です。
ちょっと不満なのは、ヨカナーン(洗礼者ヨハネのことです。この作品ではヨカナーンと呼ばれています)。
お堅い聖者にしか感じられなくて、いまひとつヒロインが夢中になる相手としてつまらないのです。
こんな朴念仁のどこがいいのだ?
いや、ひたすら拒否するからかえって燃えるんだ!
と言われればそれまでなのですが。
地の文で説明できない劇ならば、もう少し深みのある、というか、人間として魅力的な人物造型を感じられるセリフがあってもいいのになあ、と、思ったことでした。