こんにちは。
T・たまもです。
昨日の続きです。
中納言・藤原隆家(ふじわらのたかいえ)が、定子を訪問し、「すばらしい扇の骨を手に入れた」と自慢をする話です。
でも、その骨の素晴らしさについて、「ヤバい」しか言わないので、清少納言が「まるでクラゲの骨みたいですわね~」と言った、というところまでお話ししました。
クラゲの骨、という表現は、「あり得ないもの」という意味で使われたようです。
昔話には「クラゲには昔はちゃんと骨があった」という話があります。
その昔、竜宮城の乙姫様が病気になり、その病気を治すためには陸に住む猿の肝が効くらしいことがわかりました。
竜王様は陸に上がって猿の肝をとってくる者を募ります。
命を受けたのがクラゲ。
クラゲは首尾良く猿を海辺まで連れてくるのですが、うっかり肝を薬にする話を猿にしてしまいます。
猿は、気の毒そうな顔をして
「そういうことと知っていれば肝を持ってきたのに、今日はあいにく家に干してある。取ってこよう」
と、山に戻ります。
クラゲが待てど暮らせど、猿は戻ってきません。
(ここまで授業で話すと、生徒はみんなニヤニヤしたものです)
しかたなく竜宮城に戻って事の次第を報告したところ、役立たずのクラゲは、罰として骨を抜かれてしまいましたとさ。
竜宮城を探せば、いまでもどこかにクラゲの骨はあるのでしょう。
閑話休題。
つまりは清少納言の一言は、ほめ言葉ではなくその場にいた女性たちからの嫌味だったわけです。
おそらく隆家も、やっと自分だけが浮かれているのに気づいたことでしょう。
ただ、隆家のえらいのは、恥をかかされたとは思わないところ。
鷹揚なお坊ちゃまというか、やんちゃな弟気質というか、
「それもらった!オレのセリフにしちゃおっと」
と、面白がっているのでした。
ということで、清少納言の「クラゲの骨」発言は、嫌味ではあっても無礼にならない絶妙なひと言だったわけです。