こんにちは。
T・たまもです。
今日ご紹介する本は小説。
ウィリアム・ゴールディング「蠅の王」新潮社
この、イギリス人の語り口のうまさというのは、なんなんでしょうね。
国民性なのでしょうか。
この本も、息をつかせぬ臨場感、緊迫感。
夏目漱石に言わせれば、デフォーなんか「何月何日に主人公が生まれました」から時系列で話が進むしかない、つまらん、という評価だった気がしますけど、私はイギリス文学は、内容とかテーマとかよりストーリーテリングで読者を引っ張っていけるというだけでスゴイと思います。
で、お話ですが、「悲劇的な、もしくはリアルな15少年漂流記」と、確か解説にはありました。
狂気のように楽な方へ楽な方へと逃げていく少年たちの姿の哀れなこと。
そういう人間の弱さに‘蠅の王’はつけ込んでいくのでしょう。
蠅の王というのは、悪魔のひとり、ベルゼブブのこと。
人の中に住む獣性というか、醜くちっぽけな魂というか、そんなものの化身のような気がします。
少年たちは救われたのか、それともより怖ろしい場所に投げ込まれるだけなのか、ハッピーエンドに感じられないのが哀しい。