T's Cafe

小さな私の体験が、もしかしたら大きなヒントになる・・・かもしれません。前は学校の先生、今は自適のご隠居とおしゃべりしましょ。

時が過ぎる、ということは、「離れていく」こと・・・読書の時間「はるかな町」

 こんにちは。

 T・たまもです。

 今日ご紹介する本は、小説。短編集です。

 

三木卓「はるかな町」集英社

 

 夏の午後の白い道を、自転車に乗った少年が走りすぎてゆく。なつかしい、古い映画のワンシーンのような、物語の集まりです。

 見たこともないのに、「ああ、自分も知っている」、というような。


 「時間」というものについて、考えてしまった本でした。

 時が過ぎる、ということは、「離れていく」こと。

 普通は、空間移動をすることによって、距離ができることを「離れていく」と言います。

 それと並列するように、時間移動による、この場合は距離、じゃなくて、何というのでしょう、断絶ができるとでもいうのかしら。

 だから、時間が経つことによって、空間的には一歩も動いていなくても、とても遠くに離れてしまうことがあるわけです。

 それは、モノであったり、つながりであったり、心であったり、ことによると空間的に離れるより決定的な別離だったりする。

 そして、誰にも止められない。努力でなんとかできるものではない。

 しかも、せめて「ここにあった」という証明を残すことも難しい。

 取り返しがつかない、って、そういうことなのでしょう。

 そんなことを、考えてしまったのでした。