こんにちは。
T・たまもです。
今日は「なめとこ山の熊」のつづきです。
今日は熊狩りについて。
東北地方の熊狩りと言えば、マタギと呼ばれる人々の猟が有名です。
小十郎のいでたちもマタギに似ています。
調べてみると、かなりの部分で主人公・小十郎の猟は実際の猟とは違いがあります。
まず、人数。
熊は大きな獲物なので、少なくとも二人、多ければ十~三十人ほどの隊を組んで猟に出かけるようです。
長ければ1ヶ月以上をかけることもあるとか。
遠洋漁業並みですね。
小十郎のように一匹狼での狩りはウサギやキジのような小さな獣の時が主のようですし、一年中猟をしているというわけでもありません。
(普通、狩猟のシーズンは秋から冬。春夏は農業のシーズン。農業の収穫が終わってから狩猟ということでしょうか)
次に、獲物のさばき方。
先述したように熊は大きな獲物なので、頭のてっぺんからつま先までどころか、解体時の血まで保管して持ち帰り、隊の全員で平等に分けあうそうです。
確かにキモや毛皮が一番高く売れる部位なのでしょうが、小十郎のようにそれだけを持ち帰るということはないようです。
また、猟師にとって獲物は「山の恵み」であり、罪悪感を感じる対象ではありません。
したがって、熊を撃つたび落ち込んでいる小十郎というキャラクターは、「腕の良い猟師」ではあっても、性格的には決して猟師向きとは言えないわけです。
そういう意味では、淵沢小十郎の人物像は宮沢賢治の創作といえるでしょう。
つづく。