こんにちは。
T・たまもです。
先週からの続きです。
井上ひさしの小説「ナイン」を取りあげています。
今日は内容に入りましょう。
お話は「わたし」の昔の下宿先でもある中村畳店を訪れるところから始まります。
最近のプロ野球の話から、18年前、英夫くんが所属していた新道少年野球団の思い出に話が飛びます。
といっても、どうやら中村さんは、何かにつけてこの話をするらしい。
それほど思い出深いのでしょう。
それは、18年前の夏、新宿区少年野球大会で準優勝をしたときのこと。
1日で準決勝、決勝を闘い抜いた少年たちの、限界を超えた活躍。
本人たち以上に、観客である保護者や応援の大人たちの心を打ったことは想像に難くありません。
そう、打算的な試合展開が目立つプロ野球よりも。
でも、当時の純情な頑張り屋さんたちも、今や自分の生活に手一杯な大人となりました。
住むところも職業もこころも
「ばらばらになってしまった」
と、中村さんはため息をつきます。
とくに、チームの要であった正太郎くんの変貌は、中村さんには許せない。
洗濯屋の息子、捕手、4番打者、キャプテン、命名の設定からして、実力も人徳も兼ね備えていたリーダーが、今や旧友を騙して歩く詐欺師だなんて。
受け入れられるものではありません。
つづく。